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| やっとこの日がやってきた。そう、さくらが大学病院へ行く 日である。かれこれ3ヶ月、大学病院は予約で埋まっていて、 やっと診てもらえる日がやってきたのだ。 この日がどんなに待ち遠しかったことか。 午前10時の予約の為に、万が一にも遅刻してはならないと 朝6時に家を出る。結局、着いたのは8時半。あまりにも早すぎ だったようだ。駐車場で停めた車の中で私はぼんやりと時間が 来るのを待っていた。 9時半になり、受付で予約の確認を済ませた。紹介元の先生から 診てもらう先生へ事情もこれまでの経緯もすべて話は済み、レント ゲン写真も送ってくれたとのことだった為、ただ時間を待つのみと なっていた。 さて、そろそろ診療時間になる。時計は9時55分過ぎ。さくらを 車から連れて来て、名前を呼ばれるのを待つ。 しかし、一向に名前が呼ばれない。私よりも後に受付した人たちは もう診察室に行ってしまった。すでに10時30分を過ぎている。 ……おかしい…。10時からのはずなのに。飛び込みの客は診ていない はずなのに。 私は受付へ行き、10時の予定であったことを話した。すると 「予約時間に来ていただかないと診療は出来ません」 なんだと!?何を言うんだこの女は?さっき予約確認したのはお前だ ろうが!と思い、怒りを抑えつつそのことを話すと「あっ」という 表情で「少々お待ちください」と言い残し、奥の方へと去ってしまった。 しばらくして戻ってきた受付の人間は申し訳なさそうに私に説明を はじめた。どうやら、診てくれるはずの先生が急な出張とやらで不在の ため、院長が診てくれるというのだ。まあ仕方ない。待たされたうえに 忘れられていたことに腹は立ったが、とにかく診てもらえるのならと また待つことにした。すでに時間は11時30分。 それにしても遅いだろうと立ち上がったその時、奥の通路から白衣を 着た偉そうな男の人がさっきの受付の人間に何やら文句を言いながら 歩いてきた。そしてその男の人に付いてきた助手らしき人が言った。 「お待たせしました。どうぞ」 やっとの思いで診察室へ入れた。するといきなり院長と名乗った 先ほどの偉そうな男がこう言った。 「で?一体なにかな?」 意味が解らずに無言でいると、さらに 「誰の紹介でここに来た訳?」なんて言い種だ? 院長ともあろう者がなんだその態度は?とムッとしつつ、△△先生の 紹介で○○先生に診てもらうために来たと説明し、話はすべて了承済み だと話す。すると院長は 「○○くんかあ、彼はどうしたんだ?」と狭い診察室にはべらせている 助手(学生?)たち数人に尋ねる。 結局、何の申し送りもなかったようで、1から説明することになって しまった。最悪な病院だ。 そして院長は、さくらのひどい時の症状が見たいと言い、助手に命じ 真夏の炎天下の中、さくらを全速力で走らせたのだった。 リードを持って一緒に走っている助手が止めようとしても院長はまだだと 言い、さらに走らせた。 さくらがいつもよりも一段とひどくヒューヒューしだした頃にやっと 診察が始まった。聴診器をあて、採血をし、レントゲンを撮る。 レントゲンを待つ間、またもや待合室で待たされた。と、やっとレント ゲン室からさくらを連れて行った助手が出てきた。やっとか、と思い 立ち上がると、何やら院長と助手が話していて、またレントゲン室へと 戻って行った。 さらに待たされること数十分。再び診察室へ呼び戻され、中へ入る。 と、レントゲンを見ながら院長が言った。なんの説明もなく。 「大変珍しい症状です。詳しく検査をしてみないとわかりません。とり あえずエコーを撮ります」 そして再び待合室で待たせ、さくらを連れて奥のほうへ去って行った。 さくらが連れて行かれて1時間程経った。そういえば、来た時には なかったつい立てが奥の通路を隠すように置いてある。その奥から、 さくらの声が聞こえた。わが子の声を誰が聞き間違えるだろうか。絶対に さくらだと確信してつい立てに近付いた。他のお客さん(患者)は私を 不審者と思ったのか変な顔をして見ていた。 つい立て越しにこっそり覗くと、院長がこちらに背を向けてさくらを 抱いているのが見えた。院長は大声で 「よ〜し、みんなちょっとこっちへ来い!」 と助手達を呼び集めた。そしてさくらを高く持ち上げみんなに見せながら 「え〜、この患畜は大変珍しい症状なので皆よく見ておくように!原因は 不明でこれから色々と調べていくことになる」 と言いながら話をはじめた。さくらはキューンキューンを鼻を鳴らして 泣いていた。 私はその光景を見た時、もう二度とここへは来ないと心に誓った。 冗談じゃない!!私は知っていた。というより、大声すぎて聞こえていた のだ。レントゲンの時、助手が撮った2枚を院長が「こんなんじゃ使い物 にならんだろう!撮り直しだ!」と怒鳴っていたことを。そして、私に 見せたのは再度撮った2枚だけだったということも。そのうえ、さくらを 親に断りもなく見せ物のように扱うとは…。許せん!!! 会計と時がやってきた。ようやく帰れる時がやってきたのだ。 請求書の内容は、レントゲンが4枚、エコー、初診料、診察料と、結局 数万円で済んだが、なにせ見てもいない失敗作のレントゲンまで代金を 請求するとは、さすが最悪病院。そんなことを思いつつも払えというなら 払ってさっさと他の病院を探そう。とう思っていた時、院長が来て私に 言った。 「次回は○日頃に来て下さい」 「もうこちらには伺いませんので、今日の検査結果とかレントゲンを ください」 私は即答した。すると院長はなぜか動揺したように見えた。 「そ、それは出来ない」の一点張り。 頭に来ていたのもあって、私は息付く暇もなく文句を言った。他の病院 で見てもらうためにコピーでもいいからこちらへ渡してくれるよう頼んだ。 それでも「カルテは病院から出せないことになっている」と言う。しかも 私(お客)にさえも見せられないというのだ。 人間の病院でさえ、本人に言われればカルテを見せてもらえるご時世。 ましてセカンドオピニオン(?)とかいうものも浸透しつつある。 こいつは何を言ってるんだ?飼い主に見られて困るようなものなのか? 普通は何を見られても困らないはず。ましてや素人が見て理解できるもの とも思えないのに、それさえも困るのか。 その時、私の頭の中で何かがプチッと音を立てて切れた気がした。 「私が言っている意味はここへは二度と来る気もないから言ってるんです。 私はこの子を自分の信用できない所で見てもらう気はありません!そんな に見せられないようなカルテならもう来ないのですから処分して下さい。 実験されるのは御免です!」 そういって、院長の顔をジッと見た。驚いていたようで何も言い返さなかっ た。そして私はさっさと病院を後にした。 本当は見せ物にするつもりなどなかったのかも知れない。だが、どっち にしろすべての面で信用できなかった。料金にしても同じだ。失敗作まで 客に請求する病院があるのだろうか?あんな病院がテレビでももてはやされ ているのかと思うと本当に頭にくる。 あれ以来、色々な病院をまわったが、結局未だにさくらの病名も原因も 不明のままである。あの時の私の選択は間違っていたのだろうか。 それでもあの病院へは行くつもりはない。 |
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